ヤマザクラを中心に、いろいろな種類の木材を使用しています。
それぞれ木肌は違っています。
僕は、木材をぱっと見れば、たいていのものは何の木か判別は付くようになりました。
決め手になるのは、見た目と匂い。
木の器を作るのに、最も多用している材料がヤマザクラ。
堅い木ではあるのだけれど、その割には削り易い方で、刃物で切って仕上げた後の肌もきれい。
そして、使い込んで行ってからの、色の変化、赤黒く深い色合いに変化して行く様子もとてもきれい。
・・・と、僕自身一番好きな素材であるのが、ヤマザクラ。
そんな材料も、いつも良質なものが確実に手に入るかというとなかなか難しい。
たくさん入手できるときもあれば、しばらくお目にかかれないときもある。
僕が製作している木の器で、一番の人気は直径30cmの大皿。(0055 大皿300)
このお皿を作ろうと思ったら、直径50cm位の丸太が必要。
なかなか、貴重な材料です。
いよいよ大判のサクラの板のストックがなくなってきた。
今あるストックをすべて大皿用に木取りしました。
今日、サクラの丸太を入手しました。
でも、ちょっと細い。
大皿を取るのは難しい様子。
しかし、貴重なサクラ材なので、これも製材して、いろいろな木の器にして行きます。
大きな木の器用には、また大きな材料が山から切り出されるときまで・・・
大きなサクラ材が手に入るまで、ひとまず、ケヤキやクリ、ナラで、大皿を作ろうと思います。
いま、温井周辺の山は色とりどり。
今年はどういう訳か、ヤマザクラの開花が、シデ類の開花と重なって、赤、黄緑、ピンク。常緑樹の濃い緑や、新緑が混ざり合って、とてもきれいです。
秋の紅葉とは違って、春色の明るい彩りの山。
このような自然に囲まれて、本当に幸せだと思う。
器作りでは、サクラの木を一番多く使っています。
「サクラ」と一言でいっても、山の中には実にいろいろな種類のサクラの木があります。
バラ科のサクラ・・・なかでも一番良く使うのが「やまざくら」
今、作っている器の材料は、広島の山で育ったサクラであることは間違いないのですが、なんという種類のサクラなのかよくわからない。(丸太の状態で購入しているので・・・)
削ってみた感触では、アメリカンチェリーに似た材質。
(※アメリカンチェリーは、家具作りでは重宝される高級材)
ちょっと荒めの繊維は巧く刃物を通さないとバサついて奇麗に仕上がらない。
チェリー同様、シュウ酸カルシウムの結晶が含まれているようで、刃物がすぐキレなくなる。
なかなか加工はやりにくい材料ではありますが、時間が経ってからの色の変化はとてもステキなのです。
ヤマザクラも濃いオレンジ色に変色していきますが、チェリーはより濃く、赤黒く変わっていきます。
この経年変化は魅力です。
久しぶりに「樹のトレー」を作りました。
木のトレーではなくて、「樹のトレー」。
樹は、木材として利用されますが、節があったり、虫食い穴があったり、細かい亀裂が入ったり・・・いろいろな表情を持っています。
でも、これらの表情は木材としては傷といった欠陥部分として扱われています。
だから、木の器にしろ、家具にしろ、木製品には通常用いられない部分です。
僕は樹が好きなので、やっぱり樹の表情・個性といった部分(木材としては適さない部分)を、作る物にもなんとかして取り入れたいと思っています。
そこで作っているのが、お盆。「樹のトレー」です。
たまにはこんなことも・・・
癖が強いだけに、そう簡単には削らせてもらえません。
でも、その分無事に完成したときは、とてもいとおしい物になります。
まさに、樹は木材となっても生きていると本当に感じられるのです。
先日の山口アーツ&クラフツでのこと。
お話ししたお客さん…陶ギャラリーのオーナーさんだったのですが、
その方に、
「木から声は聞こえますか?木がこう作ってくれと語りかけてきませんか?」
といきなり問われたのですが・・・
僕は「全然聞こえません」と即座に答えた・・・
うーん。残念ながら、僕はそんな風な感覚を持って、木工をすることはないんです。
木材として切り出された木の塊を前にすると、後はひたすら削るだけ。
使ってくれる人の喜ぶ姿を、思い浮かべながら木を削ることはあるかもしれないけれど・・・
でも、木はしゃべらないが、リアルに音を発する。
森に入って、木のそばに立つと・・・
木が根から水を吸い上げて、葉へ実へ養分を送っている音が聞こえます。
心の中に響く音っていうわけじゃなくて、普通に耳から「ちゅぅぅー」という音が聞こえるのです。
(おもにどんどん葉を茂らせ、花や実をつける春から夏場に、水分をどんどん吸い上げています)
上の写真は、うちの工房のすぐそばにあるミズナラの大木。
今年、ナラ枯れの原因となっている、カシノナガキクイムシが食いついてしまった。
来年は葉を茂らせることはないだろう。
キクイムシに食い荒らされて、樹皮の表面に無数に開いた穴。
その穴のおかげか、木が水を吸い上げる音が、より大きく聞こえた。
これは、木が叫んでいるようにも聞こえた。